私のバイブル「自動機械機構学」 牧野洋著



若い頃に出会った大切な一冊について、少しお話しさせていただきます。それは、牧野洋先生が書かれた「自動機械機構学」という本です。

私が社会人として初めて会社に入社した時のことです。当時はまだ珍しかった、世界初のマイクロコンピュータで制御する工業用多頭色替え刺繍ミシンの設計に携わっておりました。その際に、ミシンの心臓部とも言えるリンク機構の動きを解析するために、この「自動機械機構学」を活用させていただいたのです。私にとっては、まさに仕事を進める上での「バイブル」のような存在でした。

残念ながら、この本はもう絶版になってしまい、今では手に入れるのが難しいようです。しかし、この本から学んだ知識のおかげで、私はその後、設計の仕事からNC機械加工業へと職種を変えても、計算で困るということがほとんどありませんでした。

具体的に、この本の内容は様々な場面で役立ちました。

  • ミシンの天びんという部品の動きを、一番上で一瞬ぴたりと止めるようなサイクルを作り出すためのリンク計算に応用したり。
  • 火力発電所などで使われる石炭燃焼装置の、燃料を搬送するスクリュウの溝の形を設計したり。
  • 機械を正確に動かすために必要なカムという部品の形を計算したり。
  • NC旋盤やNCフライス、マシニングセンタといった機械で部品を加工する際の、複雑な座標の計算を行ったり。

このように、本当に様々な仕事で、職種が変わっても私の強い味方となってくれました。

今振り返ってみると、この「自動機械機構学」という一冊があったからこそ、私は今日まで技術者として仕事を続け、文字通り一生の「食い扶持」にありつくことができたのだと感じております。

もし、これから機械の設計や製造に関わる若い方々がいらっしゃるならば、もし機会があれば、このような基礎をしっかり学べる書籍に触れてみるのも良いのではないかと思います。私にとってこの本は、まさに人生を切り開いてくれた、大変ありがたい一冊でした。

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