「あの時、この本に出会っていなければ」~ 行動嗜癖を振り返る ~

僕らはそれに抵抗できない」アダム・オルター著。今、この本をまた手に取って(電子書籍ですが)読み返しています。



4年ほど前のことでしょうか。ちょうど70歳に手が届こうかという頃、長年勤めた金属加工会社を退職し、ぽっかりと時間ができました。仕事一筋だった反動か、溢れるほどの余暇をどう使っていいか分からず、ついつい足が向いたのが近所のパチンコ屋でした。行けば「また来てしまった」と反省するのですが、それでも散歩のついでにと、毎日のように立ち寄る日々が続いていました。

そんなある日、夏の終わりかけの頃だったでしょうか。いつもの散歩コースを少し長めに歩いていると、偶然にも地元の図書館の前を通りました。図書館に入るのは、本当に久しぶりでした。ふらっと吸い寄せられるように入館し、書架の間をぶらぶらと歩いているうちに、一冊の本が目に留まりました。

「僕らはそれに抵抗できない」。

何気なく手に取り、目次を眺めているうちに引き込まれ、気がつけば数時間、その場で読み続けていました。この本の中で、「環境を変えないと、行動嗜癖からはなかなか抜け出すことはできない」という言葉に出会ったのです。

その時の私は、特に生活態度を改めようなどと考えていたわけではありませんでした。ただ、このまま無職で余暇を持て余していると、きっと余生をパチンコに費やしてしまうだろうな、という漠然とした不安は感じていたのかもしれません。

もし、あの時、この本と図書館で出会っていなければ、私の今の状況は全く違っていたかもしれません。おそらく、ギャンブル依存症へと進んでしまっていた可能性も十分に考えられます。そう思うと、背筋が寒くなります。

そして今、こうして改めてこの本をGoogleのプレイブック(電子書籍)で購入し、気になる部分を読み返しています。改めて驚かされるのは、依存症の一歩手前である「行動嗜癖」になり得る行動の、何と多いことか! ということです。

行動嗜癖、あるいはプロセス嗜癖とも呼ばれるそうですが、これは特定の物質ではなく、ある「行為」や「プロセス」そのものに依存してしまう状態を指すそうです。この本の内容や、私自身が少し調べてみたことも含めて、行動嗜癖になる可能性のある行動をいくつか分類して挙げてみましょう。

  • ギャンブルに関連する行動
    • パチンコ、パチスロ
    • 競馬、競輪、競艇、オートレース
    • 宝くじ
    • FX(外国為替証拠金取引)
    • 違法なカジノなど、金銭を賭けるあらゆる行為
  • インターネットやテクノロジーの利用に関連する行動
    • オンラインゲーム、スマートフォンゲーム
    • ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)
    • 動画視聴
    • インターネット・サーフィン全般への過度なのめり込み
  • 消費行動に関連する行動
    • 必要のないものを衝動的に購入することを繰り返す行為(買い物依存)
  • 衝動的な行動に関連する行動
    • 経済的な理由とは無関係に、物を盗む衝動を抑えられない行為(窃盗症)
    • 火をつける衝動を抑えられない行為(放火症)
    • 精神的な苦痛から逃れるために自らの身体を傷つける行為(自傷行為)
  • 摂食に関連する行動
    • 過食と嘔吐を繰り返す行為
    • 過度に食事を制限する行為など、食べることにまつわる問題行動
    • 飲酒
  • 仕事に関連する行動
    • 過度に長時間労働を行い、休息やプライベートを犠牲にする状態(仕事依存
  • 対人関係に関連する行動
    • 特定の人物(恋人、ホスト、ホステスなど)に過度に頼り、その関係性を最優先するあまり自分や周囲を顧みなくなる状態(恋愛依存、共依存など)
  • 性的な行動に関連する行動
    • ポルノグラフィへの過度の没頭
    • 不特定多数との性行為
    • 風俗店への頻繁な利用など、性的な行動への強いこだわりや反復行動

こうして列挙してみると、70年以上も生きていると、若い頃から含めて、意識せずとも幾つかの行動嗜癖に片足を突っ込んでいた時期があったのかもしれないな、と感じます。年齢によって、はまりやすいものも違うのでしょうね。

そして、今、私が一番興味を持っているのは、この「楽しい」「熱中している」という状態と、「行動嗜癖」、そして最終的に「依存症」になっていく、その境目は一体どこにあるのだろうか、ということです。

熱中しているだけなら、まさか自分が依存しているとは思わないでしょうからね。

この点については、まだ私自身も整理できていません。もう少し考えて、また改めてお話しできればと思っています。


そうそう、歩きスマホも行動嗜癖かもしれません。

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